2021年11月17日水曜日

相続登記について

 妻の父が亡くなった。不動産(土地や建物)の所有者が亡くなったときは相続登記が必要で、登記申請に必要な書類作成をサポートをしたので、その過程で得た知識や参照できる有用なサイトを下記にまとめた。


【不動産の所有の有無の確認】
 亡くなった方が登記手続きをすべき不動産(土地や建物)を所有または共有していたか、またそれら不動産の評価額は幾らなのかをまず確認することになるが、この確認に使える資料は下記の通り。

1.固定資産税・都市計画税課税明細書
 住民登録する市町村から毎年6月ごろに納税義務者宛に送付される明細書で、固定資産の評価額や税額を確認できる。但し、非課税の資産(保安林、公衆用道路など)については評価額欄が0円になっているので、こうしたものが含まれている場合は次の固定資産(土地・家屋)評価証明書の発行を市町村役場で申請する必要がある。

2.固定資産(土地・家屋)評価証明書
 非課税扱いで評価額が0円になっているものは評価額を記載して頂くように依頼することで、所有または共有するすべての固定資産の評価額が記載された証明書を市町村役場で発行してもらえる。

3.固定資産税 名寄帳兼 課税台帳
 山林は評価額が低く、固定資産税評価額の総額が30万円以下の山林を所有しているようなケースでは、これらの山林がある市町村から、それらを記載した固定資産税・都市計画税課税明細書が送付されない。こうした場合はいわゆる「名寄(なよせ)帳」の発行を当該市区町村役場に依頼することで所有または共有している山林(土地)の情報を得ることができる。

 尚、地番や家屋番号が分かれば、その番号から土地や家屋の詳細情報や所有者(共有の場合は持分割合も含め)を確認するために、必要に応じて法務局の「登記情報提供サービス」を利用することもできる。

相続登記が必要な土地や建物があることが分かったら、以下の情報を参照して必要な登記手続きを行う。



【不動産登記全般について】
 法務局の不動産登記申請手続きについて解説したサイト
「不動産の所有者がなくなった」のケースを選択すると、オンライン申請の方法の記事が開くが、オンライン申請する場合も法務局の窓口に書類を直接提出する場合も準備する書類は基本的に同じなので、記事中にある「書面申請」のリンク
を参照して、自分のケースに該当するリンクの記事を参照して申請書類を作成する。

以下ここでは、私が実際にサポートした遺産分割協議書による登記申請について述べる。



【相続人の把握】
 遺産分割の協議をして協議書を作成するときに最も重要な作業は、協議の当事者となる相続人を正確に把握することである。この作業に不備があると一旦作成した遺産分割協議書のやり直しをせざるを得なくなり、相続人の数が多かったり、近隣に住まいしていなかったりすると、遠方まで再度遺産分割協議書への署名・捺印を求めて相続人を訪ね歩いたり、書類の郵送・返送処理をしたりすることになり、非常に厄介なことになる。

 相続人については民法に規定されており、下記のサイト資料
の「第2章 相続人と相続人の順位」の項で確認できる。

 上記民法の内容を分かりやすく図解したサイトはこちら。
因みにこの「相続の知識」のサイトは相続に関する色々な情報が網羅されており非常に有用である。

 被相続人の死亡による相続登記が完了していないうちに、一部の相続人が死亡してその方が新たな被相続人となって追加の相続登記が必要になっているような「数次相続」が発生している場合は、各相続段階での相続人を特定する必要がある。また、被相続人の死亡時点で一部の相続人が既に死亡しているときは、代襲相続の制度があるのでこれも理解して相続人を特定する必要がある。特定したすべての相続人の戸籍情報(相続開始時点で既に亡くなられている方については出生から死亡までの連続した戸籍及び除籍謄本、生存されている方については出生から現時点までのいわゆる現戸籍)を集めてこれらの戸籍情報を確認し、更に養子、非嫡出子など新たな相続人の有無を確認する作業が必要になる。



【相続関係説明図の作成】
 被相続人と相続人がすべて把握出来たら相続関係説明図にまとめる。

1.相続関係説明図の様式
のページ中央下部にある
20)所有権移転登記申請書(相続・遺産分割)下の記載例(PDF)の4ページ
21)所有権移転登記申請書(相続・遺産分割)(数次相続)下の記載例(PDF)の3ページ
を参照して作成する。

2.相続関係説明図サンプル
 ネット検索すると色々なサンプルがあるが、私がサポートした数次相続が発生しているケースの相続関係説明図のサンプルがこちら。

<補足>
・妻の実家の父EEEEが死亡したことで相続登記の検討を始めたが、実家(建物)及び一部の山林(土地)が既に他界している祖父AAAAの名義のままになっていることが分かり、数次相続のケースになるのでそのように説明図を構成した。
・父EEEEの死亡時点で相続人となるGGGG、KKKK、LLLL、MMMM、NNNNの5名で遺産分割協議をし、最終的に祖父GGGG及び父EEEEの遺産をすべてKKKKが取得することに合意したのでその旨を()括弧付の”相続人”及び”分割”で示している。



【遺産分割協議書の作成】
 当事者となる相続人の間で遺産分割協議を開始して協議結果を遺産分割協議書としてまとめる。下記は遺産分割協議書の書き方の参考サイト。

1.数次相続が発生している場合

2.被相続人が不動産を共有していた場合

3.上記1,2を共に含む場合(私のサポートケースをサンプル化)

 作成した協議書に当事者である相続人全員が署名、捺印(実印)し、協議書が複数枚になる場合は、全員で契印(実印)すること。遺産分割協議書の各相続人の住所、氏名、印鑑は、各自の印鑑証明書の住所、氏名、印鑑と一致している必要があり、一致していないと登記申請が受理されないので注意が必要。

<参考>
契印の仕方



【相続登記申請書の作成】
遺産分割協議の結果に基づき、相続登記の申請書を作成する。
のページ中央下部にある
20)所有権移転登記申請書(相続・遺産分割)下の記載例(PDF)の1,2ページ
21)所有権移転登記申請書(相続・遺産分割)(数次相続)下の記載例(PDF)の1,2ページ
を参照して作成する。特に、上記2つの記載例の後半にある注意書きは熟読して内容を理解して誤りや漏れがないよう対応することが必要である。

登記申請書の作成に関して参考になりそうなことを以下に補足する。

1.登記の目的
 次の2つのパターンがあり、いずれかを書く
 (1)所有権移転  :単独で1つの地番あるいは家屋番号の不動産を所有している場合
 (2)持分全部移転 :複数人がある持分割合で1つの地番あるいは家屋番号の不動産を
            共有している場合

2.登記識別情報の通知の希望
 不動産の所有権を有することを証明する情報で、登記完了時点で受領することができる。通知を希望しないこともできるが、後々に不動産を売買あるいは贈与する場合に必要になるようなので通知を希望することを勧める。従い、□にチェックは入れない。

3.申請する法務局
 不動産の所在に応じて下記の法務局の管轄一覧より確認できる各法務局または支局に申請することになる。不動産が2つ以上の管轄区域にまたがるときは、管轄区域毎に不動産を分けてそれぞれの管轄区域の法務局または支局に申請書を提出する必要がある。

4.代理人による申請
 通常、相続人が申請するが、代理人による申請も可能である。但し、その場合は、申請書1件ごとに委任状の作成が必要で、各申請書の添付書類の項にも「代理権限証書」を追記する必要がある。
 委任状のサンプル

5.登録免許税
 免税措置がある場合があるので、それらの情報に注意して有効に活用することで場合によっては1円も払わずに登記できる場合がある。
<事例>
法務局トップページ
の下の新着情報の欄に2021年4月12日発行の「相続登記の登録免許税の免税措置について」という記事がある。

 私がサポートしたケースでは、上記記事のリンクをクリックして開いたページの下の方にある(2)の市街化区域外の評価額が10万円以下の土地は免税 の措置を利用して登録免許税を減額することができた。

申請不動産がすべて免税対象のときの申請書サンプル

申請不動産の一部が免税対象のときの申請書サンプル

6.申請書の数
 原則として登記申請書は1つの不動産(1つの地番または家屋番号)毎に作成しなければならないとされているが、下記の項目(申請書のヘッダーに相当する部分)が同じ場合は、まとめて1件の申請書で申請することが可能である。
 ・登記の目的
 ・原因およびその日付
 ・相続人
 ・申請人(代理人の有無を含む)
 ・登記識別情報の通知の希望
 ・申請法務局
申請書作成の手間を省くために可能なものはまとめて申請する方がよい。



【法務局へ提出する相続登記申請書および添付書類】
 相続登記の申請に必要な書類を収集あるいは作成順に注記を添えて列記する。

1.固定資産税・都市計画税課税明細書、及びまたは固定資産(土地・家屋)評価証明書、及びまたは固定資産税 名寄帳兼 課税台帳(コピー)
 被相続人の遺産(土地と家屋)を明確化するために必要だったものをすべて提出する。情報が重複しており、どちらかを出せば済む場合はその限りではない。原本である必要はなくコピーを提出することでOK。

2.戸籍謄本と除籍謄本(原本)
 被相続人については戸籍謄本と除籍謄本が必要。

 <参考>上記【相続登記申請書の作成】の項で紹介した所有権移転登記申請書の記入例(PDFファイル)の(注6や注4)の記事内に下記の説明があるが、
   ------------------------------------------------------------
 被相続人の本籍が登記記録上の住所と異なる場合には,被相続
 人が登記記録上の登記名義人であることが分かる被相続人の本籍の記載の
 ある住民票の除票又は戸籍の附票の写し等が必要となります
---------------------------------------------------------------
 被相続人が本籍地に居住し続けていたが、市町村合併等で郡、町名、番地が変更になったり、「字」や「大字」がなくなったりしていることにより、表面的に登記申請時点の登記記録上の住所と異なっている場合は、役所側が住所の改定履歴を追うことで被相続人と登記記録上の名義人との一致性を確認できるので、住民票の除票又は戸籍の附票の写し等の提出は不要である。(私がサポートしたケースは、これに該当する)

3.戸籍謄本と除籍謄本(原本)
 相続手続き開始時点で既に亡くなっている相続人の戸籍謄本と除籍謄本が必要。特に数次相続が発生している場合は漏れがないように集めること。

4.戸籍謄抄本(原本)
 遺産分割協議の当事者である相続人全員の戸籍謄本あるいは戸籍抄本で、被相続人の死亡日以降に発行されたものが必要。

5.住民票(コピー)
 最終的に遺産を相続する相続人の住民票が必要。遺産分割協議で遺産を相続しないとした方については不要。

6.印鑑証明書(原本)
 遺産分割協議を行う当事者となる相続人全員の印鑑証明が必要。

7.遺産分割協議書(原本)
 協議の当事者である相続人全員が署名、捺印した原本の提出が必要。

8.相続関係説明図
 作成したものを印刷して提出。

9.登記申請書
 作成したものを印刷し、申請者が押印(認印可)したものを提出。

10.委任状
 必要に応じて作成したものを印刷し、本来の申請者が押印(認印可)したものを提出。

※原本還付について
上記で原本を提出する書類で、使用後に返却してもらいたいものについては原本還付の手続きを利用することができる。上記2.、3.4.の戸籍情報は、8.を提出することで、請求しなくても原本還付されるので、もし6.や7.の原本還付を受けたい場合は、下記のサイトを参照し対応する。
尚、上記サイトで「割印」とあるのは誤りで、正しくは「契印」である。



【法務局へ提出】
 必要な書類がすべて準備できたら申請する法務局の窓口に行き、先に登録免許税分の収入印紙を購入して申請書に貼り付けて一連の書類を窓口に提出する。簡易チェックで不備がなければそのまま一旦受領され、更に精査して申請内容に不備がなければ1週間ほどで登記が完了する。
 完了したらその旨申請人に電話連絡があるので窓口で登記完了証と登記識別情報を受領して終わりである。



【登記相談】
 公開されているネット情報を参照してもよく分からない部分があるときは法務局の登記相談サービスを利用することができる。管轄する法務局のサイトをクリックして県の本局や各支局の情報サイトで「登記相談」や「登記手続き案内」の項を参照し、電話予約して相談を受ける。

本局や各支局により混雑状況が異なるので、一般的な質問で急ぎの場合はあちこちに電話して比較的空いている所で予約するとよい。


以上