2015年11月9日月曜日

帰国後、米国 IRA Retirement CD 口座を閉鎖する方法

<序>
IRA(Individual Retirement Account:個人退職口座)は、アメリカの個人年金制度の一つで、税制上の特典があります。CD(Certificate of Deposit )はIRA枠内で銀行が提供する金融商品の一つで、その商品で決められた一定期間内(数か月から数年)は預金を引き出さずに運用するもので、貯蓄口座などより少し高い利率になっています。

<背景>
会社勤めをしていた時に、アメリカに5年間程出向していたことがあります。この時に海外支社の人事担当より節税できるということで勧められたのが、上記のIRA CD口座です。途中解約するとペナルティがあるので、帰国後もそのままにして置きました。その後定年を迎え会社を退職したので口座を閉めることにしました。口座を閉鎖するに当たり、少し戸惑うこともあったので他の参考として情報をまとめました。

<口座解約方法>
Step1: 口座を管理する米国の銀行より、少なくとも年1回は封書で、残高、利率や商品の変更などについて連絡が来ているはずですので、この連絡に記載されているコンタクト先に電話してIRA Retirement CD口座を閉めたい旨を伝えます。
通常、初回連絡は電話になるので簡単な英会話能力が必要です。この記事を読んでおられる方は、米国赴任経験がおありでしょうからこの点は問題ないと思います。その時に日米の時間差もあるので、以降はEメールでのやり取りを希望する旨を伝えると、その後は、基本的にEメールで交信できるようになります。

Step2: 口座閉鎖のリクエストが担当部署に伝えられ、後日、銀行の国際サービス担当より個人情報更新用のフォーマットを添付したEメールが届きます。口座閉鎖の手続きに先立ち、まずこの銀行に届け出た個人情報の更新が必要になります。帰国後、特に更新の手続きをされていない方は、住所、電話番号、メルアドなどが米国滞在時のままになっていますので、これらを日本の現時点のものに変更する必要があります。


個人情報更新用フォーム(サンプル)


Step3: 個人情報更新用紙に現在の日本の住所、電話番号、メルアドなどを記入し、そのイメージファイルを添付してEメールで返信します。必要に応じて添付するファイルはパスワードで保護された圧縮ファイルなどにしてください。英語表記の住所は番地が先で国名が最後です。電話番号は、+81 (日本の国番号)に続けて電話番号の市街局番の先頭の0を削除した番号を書きます。署名欄があれば、自分のパスポートの署名と同じものを記入します。つまり、パスポート署名が漢字なら漢字で、英語表記なら英語で署名します。
通常、この個人情報の更新には有効なパスポートIDが必要になります。所有するパスポートの個人情報が書かれているページを開き、イメージファイルにして、こちらもメールに添付して返信します。もしパスポートの有効期間が切れている場合は、先にパスポートの申請が必要になります。

Step4: 先方の銀行で、送付した情報に基づき個人情報の更新が完了すると、国際サービス担当より口座閉鎖のための書類をEメールで送付してきます。銀行のセキュリティ上の規定により、この書類は通常の添付ファイルではなく、添付をダブルクリックして開こうとすると登録したメールアドレスやパスワードの入力を要求し、有効な入力が確認された場合にのみメッセージが読める様な特殊な形式になっているかもしれません。








Step5: 口座を閉鎖する場合、提出書類は下記の2つになります。
 1.Traditional IRA Withdrawal Request (米大使館で公証を受ける必要あり)
 2.W-8BEN (Certificate of Foreign Status of Beneficial Owner for United States Tax Withholding)


各書類の記入要領について説明します。

1.Traditional IRA Withdrawal Request 
下記の書類(4ページ)で赤で抹消している部分に、自分の情報を埋めてください。また、チェックを入れている部分は、同じようにチェックを入れてください。
米国滞在時に取得した Social Security Number(SSN) が必要です。また、口座閉鎖に伴う残金の受け取り方法は、通常は小切手(Check)を選択することでよいと思います。類似のケースながら少し状況が異なり、書類の記入方法が分からないような場合は、国際サービス担当経由で確認してください。

記入に際し、一つ重要な注意事項があります。
当申請書の3ページ目の V. Participant/Beneficiary Acknowledgement には何も記入しないでください。署名及び日付欄もありますが、絶対に署名や記入をしないで空欄のままにしてください。ここは空欄のまま当書類を米大使館に持参し、公証人の目の前で署名及び日付を記入し、公証印(エンボススタンプ)を受ける必要があるからです







次に、
 2.W-8BEN (Certificate of Foreign Status of Beneficial Owner for United States Tax Withholding)
これは日米租税条約に基づき、現地での免税を申請をするために提出する書類です。これを申請しないと、自動的に30%の連邦税を徴収されてしまいますので大事な書類です。
赤で抹消している部分に、自分の情報を埋めてください。下記でチェックを入れている箇所や記入している部分は、同じようにチェックおよび記入をしてください。




Step6: 次に、1.Traditional IRA Withdrawal Request に対して、米大使館で公証サービスを受ける方法ですが、まず、米大使館のHP>アメリカ市民サービス>公証 メニューから自分が居住する県を管轄する米大使館を確認し、公証サービスを受ける日時をオンライン予約します。
http://japanese.japan.usembassy.gov/



予約した日時に書類(1.Traditional IRA Withdrawal Request )、写真付きID(パスポート、免許証など)を持参し、米大使館に出向きます。当然ながら大使館はセキュリティが厳重で、ノートパソコン、携帯電話、ラジオ、カメラ、その他の電子機器、飲食物は持ち込めません。これらの品は係員に預かってもらい、空港のセキュリティ同様、その他携行品を監視装置に通し、チェックゲートを通ってから入場します。

通常は、サービス予約をした本人しか館内に入れませんが、案内された事務所の窓口で、同伴者がいるので入場を許可してもらいたいなどと伝えれば同伴者も入場できる場合があります。

窓口で公証サービスを受けるための料金を払い、呼ばれたら公証人の前で、自分の名前、生年月日、書類の簡単な説明をし、右手を挙げて宣誓をしたあと、指示に従い、空欄にしていた箇所に署名をし、日付を記入後、公証人に手渡すと公証印(エンボススタンプ)が押されたものが返却されます。

Step7: 公証を受けた書類1.と、もう一つの書類2.を国際郵便(追跡できるものが望ましい)で、先方の銀行が指定する宛先に郵送します。

Step8: 3,4週間後に先方の銀行からドル建て小切手が郵送されてきます。必要に応じて、自分が口座を持つ銀行に持ち込み、日本円に換金して自分の口座に振り込んでもらうよう申請します。小切手の引き当てなど銀行間の処理に通常1か月ほどかかります。ドルから円への換金レートは、申請時ではなく、換金時点(つまり約1か月後)のレートになります。

以上、少し(?)面倒ですが帰国してからも口座閉鎖処理は可能です。処理に係る費用も幾つかありますので、閉鎖する口座の残高と相談して手続きを開始してください。(手続きに係る費用の方が多くなり損をしてしまったということの無いようにしてください)

<費用の参考>
電話代(日本から米国):¥200
大使館への移動費用: ¥0~数万円(居住地と大使館がどれほど離れているかに依ります)
公証料金: $50 (円貨払いなら¥6000程、為替で変動します)
国際郵便料金:¥1200
ドル建て小切手の円貨換金手数料:¥5000(銀行により多少差があるかもしれません)

<参考リンク>

What Is a Traditional IRA Certificate of Deposit?

※ IRA(Indivisual Retirement Account) CD とは何か、その概要が分かります。


JETRO:米国からロイヤルティーを受け取る場合の源泉税課税

※ 上記のIRA Retirement CD口座の閉鎖は、ロイヤリティのケースではありませんが、サイト内に源泉税課税の説明や、財務省の日米租税条約および米国内国歳入庁(IRS)の関連情報のリンクなどがあり役に立ちます。